コラム「なぜ、依頼者のために?」

法テラスで全国に赴任している若手弁護士(スタッフ弁護士)にむけて、コラムを執筆しました。
法テラスは、全国津々浦々に法の光を照らすために、経済的に余裕のない方に法的支援をする国の設立した機関です。
私もかつて法テラス専属のスタッフ弁護士として函館に3年間赴任しました(2009~2011)。
依頼者の話を聴いて共感し、文献を調べて論理を組み立て、解決まで伴走する-という当時の活動が、今でも自分の原点になっています。
私は今も現役スタッフ弁護士の相談にのっていまして(業務支援室・専門相談員)、かれらにむけて、ちょって立ち止まってもらえる機会になればと思って書きました。
そもそもの弁護士の在り方について、自分も考えるきっかけになったので、ここに紹介します(^^)

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「なぜ、依頼者のために?」H29.5

なぜ依頼者のためにこんなに頑張っているのだろう。
なぜ依頼者のためにこんなに頑張れるのだろう。
なぜ依頼者のためにこんなに頑張らなきゃならないんだろう。
代理人だから? 弁護士だから? そういう役目だから?

こんなことって考えたことあります?

支援室に相談される皆さんは、依頼者のために、本当に熱心に知恵を絞り、文献を調べ、アイデアを求めてご相談にいらっしゃいます。メールでも電話でもです。
ここまで自分のことを思って動いてくれるスタッフ弁護士がいるなんて、依頼者の方は本当に幸せだと思います。

でもときどき、そんな依頼にまで応えなければならないの?と、相談中に感じるときもあります。
-自己破産はするけど残ローンのある車は引き揚げさせたくない。
-お金を回収したら生活保護が止まってしまう。
-扶助の償還金を返すのが大変だからなんとかしてあげたい。

たしかにそれは依頼者の希望なのでしょう。
でもそれって、本当に依頼者のためにやらなければならいことなの?
「依頼者のために」そこまでしてがんばらなければならないの?
そもそもどうして弁護士は依頼者のために頑張ることを「よし」とされているんだっけ?

それをたどると、冒頭の疑問〈なぜ依頼者のために?〉に立ち戻ってしまうわけです。

私の考えですが、それは、
依頼者への貢献が、社会の貢献につながるから、だと思います。
依頼者の意思にもとづきその利益を実現することが、世の中の正義と法秩序を実現することにつながるから「よし」とされているのだと思います。

依頼者の意向を汲んでその利益を実現することそれ自体は、弁護士でなくてもできるでしょう。
でも、それが法に照らして正しい利益実現だと判断でき、それがよりよい法社会の実現につながるんだと見通すことができ、そのために法を使いこなすことができるためには、社会から一定水準の能力を要求されます。その水準のひとつが「弁護士」の資格なのだと思います。

だから、私も皆さんも、一見依頼者のためだと思える事柄でも、木を見て森を見ずになっていないか、バランスを欠いていないか、本当にそれが社会のためにつながる選択肢なのかを、いつも見据えて見極めていなければならないのだと思います。

依頼者のために尽くすことが、世の中のためになると思うから、頑張れる。
依頼者のために尽くすことが、世の中のためによくないなら、無理しない。
依頼者のために、そんな勇気も必要だと思います。

法テラス(日本司法支援センター)

 

 

弁護士 波戸岡光太
その思い、前に進める法律家。
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