昔話法廷「さるかに合戦」裁判-二つの真実-

昔話法廷

NHKのテレビ番組「昔話法廷」(Eテレ)、今年も新作が放映されましたね。
三匹のこぶた、カチカチ山、白雪姫、アリとキリギリス、舌切りすずめ、浦島太郎、、、有名な昔話の主人公たちが、その後、裁判にかけられてしまいます。

しかも、裁判での審理を終えた後、果たして判決はどうなるのか!?というところで番組が終わります。
つまり「あなたならどう考える?」という問いかけを視聴者に投げかけて番組は終わるのです。
わずか20分間の番組で、よくぞここまで切り口するどいドラマができるのだなと敬服するばかりです。

さて、今年の新作のひとつは「さるかに合戦」でした。
柿の木の上から、カニ親子に柿を投げつけて死に至らしめたサルには、はたして死刑を科すべきなのでしょうか。

「目には目を、歯には歯を」という観点から、死をもって償うべしとして、死刑を求める検察官。
サルの悲しい「生い立ちと更生」という観点から、生きてこそ償いはできるとして、情状酌量を求める弁護人。

どちらの言い分が正しいでしょうか。

いや、この問いは正しくありませんね。

どちらの言い分も正しいでしょう。

一般的に持たれているイメージとして、検察官は悪を懲らしめる仕事、弁護人は悪い人の味方をする仕事、という見方があると思います。
けれど、このドラマを見ると、検察官も弁護人も、ことさら事実をねじ曲げたり、大げさに表現したりしていません。
命を奪ったという事実の意味と、苦悩にまみれた猿の心の葛藤、どちらもサルの「真実」に光を当てています。

人間には、「良い」「悪い」のどちらか一方しかないということはありません。
良い面もあるし、悪い面もある。両方が「真実」です。
両方から光を照らされることで、その人の「全体像」が見えてくる。
良い面に光を当てるのが弁護人、悪い面に光を当てるのが検察官。
そうして浮かび上がった全体像を見てジャッジするのが裁判官。
これが裁判という仕組みです。

二つの真実をもとにどう判断するか。
これは困難です。でも判決を下さないわけにはいきません。
だからこそ判決を下すということは、それが本当に正解なのか、ずっと考え続けなければならないテーマだといえます。

はたして、サルさんの運命やいかに?
NHK「昔話法廷」

弁護士 波戸岡光太
その思い、前に進める法律家。
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