債権を時効消滅させない方法

債権回収 時効

法律で定められている様々な権利には、一定期間を過ぎたら請求できなくなる「時効消滅」という制度があります。債権回収でも時効の問題が存在しています。このことは皆様もいちどは聞いたことがあると思います。

そのため私は、債権が時効で消滅してしまう前に、弁護士として債権者の方にアクションをとることをアドバイスしています。
今回は、債権回収が時効で行き詰まってしまう前に、どのようなアクションをとればよいのかについて、インタビュー形式でお伝えします。


―債権の時効が近づいてきてしまったら、弁護士としてどのようなアドバイスをしますか?

時効の進行を止めるために、「時効の中断」という措置を取ります。

まずは、時効に関するタイムラインのイメージをつかんでおきましょう。
時効消滅のカウントダウンが始まる日を「起算日」といい、
カウントダウンをストップさせるのが「中断」、
カウントダウンがストップせずに時効を迎えてしまうのが「時効完成」、
そのあと債務者が時効を使って権利を消滅させるのが「援用」という流れです。

そもそも、なぜ時効消滅という制度があるかというと「権利の上に眠る者は保護しない」「永続した事実状態の尊重」という価値観があるからです。債権者だからといっていつまでも権利を放置している人を、法は保護しませんよ、というものです。

ですので、債権者から請求するというアクションを起こしたり、債務者が自分で債務の存在を認めたりすれば、債権者は「権利の上に眠る者」ではなくなり、時効の進行は止まります。これが「中断」です。

時効が完成した後に債務者に時効を援用されてしまうと、債権は時効となって消滅してしまいます。そのため、債権が時効にかかる前に時効を中断することが必要です。

たとえば、債務者に債務を支払う旨を一筆書いてもらったり、債権の一部でも支払ってくれれば、時効完成を食い止めることができます。これらは後から覆すことのできない強力な証拠となります。
一筆というのは、債権の発生日と内容と金額、それを認める旨の債務者の署名と日付を書いてもらうことです。

―債権回収の問題が発生している状況で、一筆もらうというのは、ハードルが高いように思われますが……

実際にはそれほどハードルは高くはありません。私の債権回収の場合、債権者が債務者に一筆をお願いして書いてもらえなかったケースは、ほとんどありません。

もちろん、いきなり「一筆書いてください」というような話をすれば、相手は警戒して心を閉ざしてしまいます。あくまで自然な会話の流れが大切です。

たとえば、債務があることを前提に話が進んでいるのであれば、「お互いの認識をそろえておくために議事録的に書面に残しておきませんか」というかたちで提案するのも一手です。

流れを整理した書面を用意して、「上記のとおりです」というような言葉でサインしてもらえれば、裁判の際も証拠となります。債務者が記入するのは署名だけという形にして、あらかじめプリントしておくのもよいですね。

書面を用意するのが難しければ、過去の請求書の余白に、「確かに払います」とか「間違いありません」という旨を書いてもらうのも有効です。

やり取りの内容を録音しておくという方法もあります。なぜなら、会話のなかで「ちゃんと払います」などの返事があれば、これも証拠として裁判で使えるからです。(ただし隠し撮りはやり方によっては問題となる場合もあるので、弁護士に聞くことをお勧めします。)

―一部でも支払えば時効が中断するのであれば、少額でも支払ってもらうほうが、一筆をもらうよりも簡単な場合があるような気がします。

そうですね。ですので、一筆もらうことと、一部でも支払ってもらうことは、戦略のオプションとして両方持っておくとよいでしょう。一筆をもらえなかった場合でも「今手持ちのお金を少しでも払ってもらうことはできますか」と払ってもらい、この債務の弁済として受け取りましたという領収証を発行することで、時効を止めることが可能です。


皆様の手元にある債権の時効は大丈夫ですか?商事債権、売買代金など債権が消滅時効となる期間は様々ですので、もしよく分からないという方は、一度弁護士に相談することをお勧めします。もし、時効が近づいてきている債権があるのならば、一筆もらう、あるいは一部を支払ってもらうということにトライしてみてください。波戸岡にご相談いただければ、法律的に有効なアプローチと実践経験を踏まえた心理的なアプローチでアドバイスさせていただきます。

債権の時効で困っておられる方には、「相手が払ってくれないけど、しばらく様子をみよう」とゆったり構えている方が意外に多いように思われます。そのうちに気づいたら1年あるいは2年たってしまい、債権が時効消滅してしまったというケースが実に多いです。平時でも債権回収についての適度な危機意識をもって債権管理をすることが必要です。

日頃から債権回収問題の予防について取り組みたいということであれば、弁護士と顧問契約を結ぶことも有効です。顧問弁護士の意義については「中小企業にとって顧問弁護士は必要か?」を参考にしてください。

その思い、前に進める法律家。波戸岡光太でした。

弁護士 波戸岡光太
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