中小企業にとって顧問弁護士は必要か?

弁護士の仕事


中小企業の経営者である皆さまは、顧問弁護士の必要性はどこにあると思いますか?
顧問弁護士といっても漠然としたイメージだけなので、顧問弁護士を付けないままでいる中小企業経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、企業の規模に関わらず、ビジネスを進める以上、いたるところにリスクは存在します。リスクと適切に向き合うために顧問弁護士は必要ですし、顧問弁護士を活用できる場面は実はイメージ以上にたくさんあります。

そこで今回は、中小企業が顧問弁護士をつけたほうがよい理由について、インタビュー形式でお伝えいたします。


顧問弁護士の必要性について、中小企業経営者の方の本音は「何か起きた時に相談すればいいから、顧問弁護士は不要」というのが多いと思うのですが、この考え方にリスクはあるのですか?

そもそもリスクを放置してしまうことが一番のリスクだと言えます。「もう少し早く相談してくれたら……」というケースは本当によくあります。「何か起きた時にはよろしくね」と中小企業経営者の方はよく仰ってくださるのですが、実はすでにその何かが起きていたのに気づかなかったために事が大きくなったことはたくさんあります。顧問弁護士が付いていれば、トラブルを未然に防げることはたくさんあります。

顧問弁護士が付いていることで未然に防げるトラブルのイメージが湧かないのですが……

そうですね。それでは、3つのケースを挙げましょう。

1つ目のケースは、問題社員への対応のケースです。会社の規模が大きくなってくると、様々な人を採用するようになります。そうすると、「席にいればお金がもらえるんでしょ」というスタンスの人も出てくることがあります。そんな時に、「出勤時間を守らない」「締切を守らない」とあれこれ悩んだ中小企業経営者の方が、エイヤっと解雇してしまい、そうしたら労基(労働基準監督署)に駆け込まれてしまったということは少なくありません。

もし顧問弁護士として私が付いていたのなら、問題社員に対する悩みを聞いた時点で、「勤怠記録を残し、問題行為を記録しておいてください」と今からとるべき行動をアドバイスしたり気づきを提供したりします。どのくらいの頻度で朝や仕事に遅れるのか、いつどのような言動をとったのか、記録しておかないと後で証明できなくなってしまうからです。その他にも、社員とのコミュニケーションで気を付ける言葉遣いや接し方などの注意点をお伝えすることで、中小企業経営者の方が見落としがちな点に気づいてもらうことができます。

2つ目のケースは、債権回収に関わることですが、「あの取引先、危ないぞ」と思ったので強気に出たところ、それが裏目に出て相手と連絡が取れなくなってしまい、どうにも動きがもたつき、いざ債権回収問題に発展した時に手元にあるのは請求書だけ、ということもよくあります。

私が顧問弁護士だったら、まず中小企業経営者の方の怒る気持ちを理解し受け止めてから、冷静に契約書の有無を確認し、「一筆とっておきましょう」「相手との連絡手段は確保しておいてください」と助言することができます。手元に請求書しかないことのリスクに気づいてもらいます。


3つ目のケースは、顧問弁護士を付けていない方はハッとされるかもしれません。
それは、相談相手となる弁護士が初めて会う人だと、中小企業経営者の方のビジネスを何も知らないところから始めなければならないということです。そうすると、本題の相談内容に入る前に、「事業は何を?」「従業員数は?」「取引先とのやり取りの形式は?」といった基本的なことから聞かれてひとつひとつ説明しなければなりません。その結果、本題に取り組む動きが遅れてしまい、弁護士との信頼関係をどう築こうかとやりとりしているうちにトラブルが大きくなってしまうこともあります。

私は顧問弁護士として、クライアントの事業について日ごろから詳しく勉強するようにしています。そうすることで、何かあったときにすぐに本題から取り組める態勢がとれます。
クライアントの本業について知ることは純粋に楽しいということもあります。世の中には様々なスゴイ世界があり、経営者の方は素晴らしい商品やサービスを世に提供しているんだと実感することができ、そんな経営者を私は本当に尊敬しています。

それだけではありません。中小企業経営者の方とのパートナーシップが築けるんですね。顧問弁護士としてお付き合いしていれば、いざ何か起こったときに、お互いに力を発揮し合えるところを明確に切り分けることができます。つまり、問題解決に向けて役割分担することができるのです。

顧問弁護士との役割分担ですか。顧問弁護士には全てお任せできるのでは?

ここは大切なことなのでしっかりお話します。

弁護士の実際の仕事を知らない方の場合、つい弁護士に丸投げしてしまいがちです。企業の何十年にも渡る歴史や全カタログなども含めて、あらゆる資料をそのまま送って「なんでもあります。見てください。信じてるのでよろしくお願いします。」と言われても、正直なところ弁護士は困ってしまいます。

もし顧問弁護士としてお付き合いしているのならば、先ほどのパートナーシップの話に戻りますが、「この専門知識は波戸岡は分からないから、裁判官も分からないな。当社の方で説明資料を作ります」とクライアントが力を発揮する部分と、「その説明に、法的な意味をもたせて論理構成をし、判例を調べ、裁判官への伝え方を工夫するのは波戸岡がやります」といった必要な役割分担がスムーズにできます。

クライアントに作業をお願いするというのは、弁護士の側も遠慮してしまいがちですが、餅は餅屋。弁護士がすべての資料を準備することで、かえって精度が下がってしまう場合もあるんです。弁護士とクライアントが二人三脚で取り組んだ方が、問題を解決できる確率はぐっと上がります。

顧問弁護士とのパートナーシップをイメージできる例はありませんか?


『下町ロケット(池井戸潤)』が分かりやすいですね。あの小説の中でロケットエンジンの部品の技術盗用に関するシーンが登場します。技術盗用をされた中小企業経営者が、最初に相談した弁護士は、全くパートナーシップが築けない方でした。
「そもそも特許というのは素人には難しいんだよ」と言わんばかりに、弁護士としての経験論を振りかざすばかりです。結局、解決策は出てきませんでした。
しかたなくその経営者は別の弁護士に相談するのですが、そこで感動する出来事が起こります。新たに相談した弁護士は、経営者に会うやいなや「聞きたいことがたくさんあります」とロケットエンジンに対して矢継ぎ早に質問を投げかけてくるではないですか。

会う前に渡していた膨大な専門的資料にも付箋がびっしり。そして、弁護士が「ロケットエンジンってどうやって作るんですか。すごいですね!」と興味をもってくれる様子に、経営者は惚れこみ、パートナーシップを築いて技術盗用に立ち向かうんです。

弁護士は現場で起きていることを教えてもらって、法律のフィルターを通して何ができるかを考え、策を練る。そういう意味で弁護士は先生ではないのです。エンジンのプロと法律のプロ。『下町ロケット』には、プロがお互いにリスペクトして強みで補完し合うという、私の思う理想の顧問弁護士像がありました。

顧問弁護士の「あるべき姿」はどのようなものだと考えていますか?

ひとつは、すぐに法律相談にのれる態勢をとっている姿です。中小企業経営者が後ろを向くと、そこに波戸岡がいる、というような。だからこそ、中小企業経営者は本業のビジネスのために前だけを向いていられるメリットがあります。

もっとも、私は「なにかあったら呼んでください」だけでは、顧問弁護士の提供する価値として足りないと思っています。
もっとお役に立てることはあるはずです。

だから、顧問弁護士の「あるべき姿」のもう一面として、私の場合は経営者の方に「気づきを提供すること」を現在進行形で考えています。私は様々な企業と関わらせて頂いているので、様々なトラブルや他社の事例といった知見に基づいて、経営者には見えづらい“法の網”のリスクを教えて差し上げられます。「あそこには地雷」「あそこには茨(いばら)」というようにです。

このごろ、「何かヒントありませんか?」と言われることも増えてきました。ですから、気づきを感じていただくという面でも、弁護士にはもっと提供できる価値を引き上げるポテンシャルがあるのではないかと感じています。
そのポテンシャルを引き出すべく、私自身、法律にとどまらず経営学や心理学、ビジネスコーチングの分野にも積極的に取り組んでいます。

では、顧問弁護士を付けるタイミングというのはあるんですか?

今日のおさらいをしておきましょう。リスクを放置しリスクを感じないことが一番のリスクとも言えます。そういう意味では、タイミングは今かもしれません。
その一方、実感として「そろそろうちも顧問弁護士を」というタイミングが経営者の方々にはあると思います。

「従業員数が増えた」「取引額が大きくなった」「取引先が増えた」

ざっくりいうと、これらが主なタイミングです。「うちは小規模だから、まあ大丈夫だろう」ではなく、顧問弁護士を付けるタイミングを逃さず、お話をいただけたらと思います。


中小企業が顧問弁護士を付けないことのリスクについて、考えていただけましたでしょうか。

法的リスクで足元をすくわれないように、リスクを見極め、本業のビジネスに心ゆくまで専念して前に進んでいくために、顧問弁護士の導入を一度考えてみてはいかがでしょう。波戸岡まで、いつでもご相談ください。

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弁護士 波戸岡光太
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