建設業界の債権回収問題

債権回収

「先生もがんばってくださいよ。こちらも彼らを待たせられないんだ」
電話口の言葉からは、イラつきと応援とが入り混じる、Cの複雑な感情が伝わってきました。

建設業界は、発注者→元請業者A→下請業者B→孫請業者C→D→…とつながる形をとることが多いため、例えばAがBに代金を払わなかったりすると、水道の元栓が詰まったように、その先のCやDにも代金が入ってこないことが起きたりします。

この時の私の依頼者は下請業者B。冒頭の電話は孫請業者Cからの言葉。待たせている彼らとはその先のDやEでした。
元請業者Aが依頼者Bに代金を支払ってこないため、私はAに対する債権回収を行っている最中でした。
もっとも、零細企業のBは、Aからの代金回収ができないと、孫請業者Cに支払うお金が用意できない状態でした。
たまったもんじゃないのはC。私に怒りの電話がかかってきます。
私が「Bだって払いたいけど用意ができない」と説明しても、「そんなの関係ない」「いいから早くAから回収せよ」と気持ちが収まりません。もっともです。CはBと契約しているのだし、Cの先にはまだ支払いを待っている業者DやEが控えています。

そうかといって、ない袖は振れない。

共通の敵はだれだ。
元栓を閉めたのは誰だ。
(この場合)Aだ。

何とかしてAに払わせられないか。
どこかにAの資産がないか。
Aは他にどこから仕事を受けているのか。その代金を差し押さえられないか。

こうして、B以下の業者が、利害関係が対立しつつも、問題の大元Aへのアプローチ方法をめぐって、知恵をしぼりました。
このケースでは、CやDの協力で、Aの別件受注先を探し当て、Aの債権を差し押さえることに成功しました。

しかし、いつもそう上手くいくわけではありません。むしろ、B以下の足並みがそろわず、Aの財産情報もとれずに、債権回収に失敗するほうが多いでしょう。

このような「水道の元栓」の仕組み、「親亀転ぶと子亀も転ぶ」という関係、
こういう構造そのものが、今回のような債権回収問題を引き起こしています。

かといって、発注される仕事が広範囲で複雑であれば、請負業者も、仕事を細かく分けて別業者に発注していくのですから、こういう構造になるのは自然かつ合理的ともいえます。
それは建設業界に限らず、IT業界でも、製造業界でも同じです。

ちなみに下請法は、大会社がこういう力関係を利用して小会社を苦しめることを禁止しているので、この法律は中小企業の味方としてぜひ利用したいところです。
それでも、この法律ですべてが解決できるわけではありません。

どの業者も、最終的には発注者やユーザーのために役立つよう、プロの知恵や技をふりしぼって仕事を完成させているのですから、どうか一か所で水道を詰まらせないように、債権回収問題が発生しないように注視しつつ、それでも問題が発生したら迅速な債権回収を行って、仕事に関わる全べての業者が潤うようにしたいものです(^^)

弁護士 波戸岡光太
その思い、前に進める法律家。
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債権回収の道しるべ