判決をみすえた和解

債権回収

「先生は、きびしいですね」
和解が成立した後、廊下ですれちがった裁判官からの、あいさつ代わりの言葉でした。
私は、それを誉め言葉と受け止めました。

契約トラブルが起きて相手が代金を支払わないときに行う債権回収は、
当事者間での交渉がまとまらなければ訴訟に発展します。
訴訟になると双方が自分の主張をぶつけ、証拠を出し合い、ガチンコ勝負を行います。
もっとも、それを最後までやり合い相手をねじ伏せたとしても、相手が納得しなければ現実的な債権回収、つまりお金の回収は約束されません。
他人のポケットに手を突っ込んでお金を回収することは簡単ではないのです。

それよりも、訴訟に進んでも、双方の言い分を踏まえつつ、お互いが話し合って解決したほうが、相手も具体的な返済計画を示してくるので、債権回収の確率はぐっと高まります。
訴訟の大半が判決ではなく和解で終わっているのはそのためです。

裁判官も、判決になった場合の判決内容をある程度意識して、当事者に和解を促します。
このとき、裁判所が判決の場合とかけ離れた和解を勧めることは考えにくいです。
判決となった場合の「幅」あるいは「ゾーン」の範囲で、和解の提案をしてきます。
判決も和解も、実際の紛争実体に即した解決でなければならないからです。

そうすると、裁判所から提示された和解案を受け入れるかどうかを判断するとき、
弁護士は、「判決になったらどうなる」「裁判官のメッセージは何だ」というアンテナを張り巡らせ、鋭い嗅覚(きゅうかく)をもって臨まなければなりません。
裁判官は、予定している判決は口外しないものの、なぜその和解案を提示するのか、「ヒント」を投げてくれます。
そのヒントを感じ、こめられた意図を嗅ぎ取る力が必要になります。

その裁判では、契約トラブルで生じた500万円の損害賠償金を請求していましたが、
裁判所は、当方依頼者にも一定の落ち度があることや、先方もすぐ払える金額として、350万円での和解を提案してきました。

しかし私は、その事案での裁判官の「判決ゾーン」は400万円もありうると考え、400万円での和解も無理な金額ではないと感じました。
だから、この和解で400万円を要求しても、裁判所はなお和解をあきらめない、つまり和解はこわれないと判断しました。

「400万円でないと応じられません」私ははっきり述べました。

和解成立。

全員「ありがとうございました」。

退席。

「先生は、きびしいですね」
和解が成立した後、廊下ですれちがった裁判官からの、あいさつ代わりの言葉でした。

後日、この債権回収は無事完了しました。

※上記のケースは、実際の事案をもとに再構成しています。

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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
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