弁護士の役目(債権回収の本当の目的)

債権回収

「すっとしました。」
「えっ?」
「今までずっと、頭の上にモヤモヤがあったんですけど、霧が晴れたみたいに、すっとしました。」
「ほんとですか。よかったです!」

--あぁ、この言葉のために、僕は頑張ってきたんだな。
そう思える瞬間です。

ここは裁判所のロビーです。
今しがた和解が成立し、弁論準備室を出た依頼者と私は、二人並んで裁判所の廊下を通り、ロビーをよこぎっていました。

依頼者は、自分が請け負った仕事をやり遂げたというのに、相手からクレームをつけられ、その代金の債権回収をできずにいました。
金額だけを考えれば、この債権回収ひとつくらいあきらめても経営に影響はありませんでした。
けれど、その仕事は自分がプロとして、プライドをかけてやり遂げた仕事です。
それを相手がクレームをつけて、代金をまったく払わないというのは、どうしても納得ができない。

その依頼者はらちがあかずに私のところに相談に来てくれました。
私はすぐに内容証明郵便にて督促状を出しましたが、相手からの返答は相変わらずでした。
そこで私は裁判外での債権回収交渉には見切りをつけ、訴訟を起こしました。

訴訟での相手の反論に説得力はなく、裁判官の話しぶりからしても、これは全額請求できる、つまり全部勝訴できる事案であることが伺えました。
けれど、どうも相手方は、その代金を一括で支払える資金的余裕はなさそうでした。
これまでの根拠なきクレームも、要は払える手元資金がないので、何とか支払いを先延ばししようという魂胆(こんたん)だったわけです。

--何言ってるんだ、全額一括で払え、減額請求には応じない、そんなんだったら判決をもらおう。
こういう選択もありえます。
「勝訴」がゴールであれば、そういう選択にもなるでしょう。

けれど、弁護士である私の役目は、とくに契約トラブルを発端とする債権回収における私の役目は、判決がゴールではありません。
その先の、お金の回収です。お金を回収して、依頼者の手元に戻すことです。
そうすることで、依頼者に仕事の対価を受け取ってもらいます。
そうすることで、依頼者に心の安堵をもたらし、明日からまた本業に専念してもらいます。
本業に専念してもらい、世に役立つ商品やサービスをたくさん生み出してほしいと願います。
それが、弁護士の、私の役目です。

だから、この裁判では、「和解」を選びました。
相手がこの先どうやって払っていくのか、
今、手元資金で払える金額はいくらか、
これから、毎月のやりくりで払える金額はいくらか、ていねいに見定め協議しました。
相手の支払い意欲を維持させるために、若干の減額要求にも応じました。

依頼者も一緒に裁判所に行き、そのプロセスを共有しました。
当初支払いを拒んでいた相手の態度が変わっていく様子を目の当たりにしました。
依頼者も、和解でこの債権回収を解決することにうなずきました。

裁判官が和解条項を読みあげます。
読み終えると「以上です。ありがとうございました」と、我々、相手方、裁判官のそれぞれが互いに礼をして和解成立です。

弁論準備室から出た依頼者と私は、二人並んで裁判所の廊下を通り、ロビーをよこぎりました。
私は内心ちょっと不安でした。
即金での全額回収にはなりませんでした。
「勝訴」というお墨付きももらいませんでした。
それでも、これまでの協議と相手の態度からして、今後の回収はできるだろうと思う。
ただ、そのあたりを依頼者はどう思っているのだろう。
一応、和解の席ではうなずいていたが。。。

「どうでしたか?」と聞いてみようか。。。
それとも、このまま「ありがとうございました」で別れるのか。。。

「すっとしました。」
「えっ?」
「今までずっと、頭の上にモヤモヤがあったんですけど、霧が晴れたみたいに、すっとしました。」
「ほんとですか。よかったです!」

--あぁ、この言葉のために、僕は頑張ってきたんだな。
そう思えた瞬間でした。
その後の回収も、順調です。

ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。

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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ

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