依頼者の可能性を信じているか

弁護士の仕事

法テラスでがんばるスタッフ弁護士(常勤の若手弁護士)にむけてコラムを書きました。
つねに自分にも言い聞かせ、弁護士の原点に忠実に、日々努めてまいります!

「依頼者の可能性を信じているか」

弁護士の仕事をただ続けているだけだと、次第に依頼者との関係が不自然になっていく危険があります。
「私は法律を知っている人」「あなたは法律を知らない人」
「私は何が合理的かを知っている人」「あなたは感情的な人」
「私は弁護士でいそがしい」「あなたは自分に合わせて動くべき」
というオーラを(自分でも気づかないうちに)出して、依頼者と接してしまうのです。
とくに法テラスでの相談を受け続けていると、相談者から感情的な怒りをぶつけられたり、あらゆる出来事を自分以外のせいにする方に振り回されたりして、気づくと自分の思考が相談者に「寄り添えない」方向に傾いてしまいそうです。

でも、そんなときこそ、立ち止まり、弁護士の原点を振り返る必要があります。
弁護士がいて、依頼者がいるのではない。依頼者がいて、依頼者のために弁護士がいる。
弁護士がいて、依頼者が話すのではない。依頼者が話すのを、弁護士は教えてもらう。

この先後関係を見誤ると、弁護士として致命的な誤りすらおかします。
例えば、先日行われた労働実務研修での一場面。私は、解雇された相談者になったつもりで、
「先生、私は職場に戻りたいんです。戻れますよね!未払賃金も戻ってきますよね!」
とちょっと強い口調で皆さんに迫ってみました。すると、皆さんからのいくつかの回答は、
「いや~、それは難しいですよ」「今から戻ったって、職場にいづらいんじゃないですか」
というものでした。
ちょっとさびしかったですね。自分の思いをすべて受け止めてとは言いません。職場に戻るのが難しいだろうことなんてわかってる。でも、せめて一緒にゴールを目指そう、せめてあなたのためにベストを尽くしますと言ってほしかった。
そして、その後の解説。実際の事案ではどうだったか。実際に職場に戻ったケースがあるという。
弁護士はなぜ誤ったアドバイスをしたのか。

「依頼者の可能性を信じていたか」、これに尽きると思います。
弁護士は法律のプロだから、法律のアドバイスを的確に行うのは当然です。
その次に、「ではどうするか」という、依頼者の選択、判断、次への一歩は誰が決めるか。これは依頼者が決めます。そうだけど、一人では不安です。そのときに、依頼者すら気づいていない豊かな可能性、きっとこの人は秘めた力を持っている、自分の力で確かな道を歩めると、弁護士が信じ、引き出し、勇気づけ、伴走する。それでこそ真の「寄り添う」弁護士だと思うのです。
どれだけ依頼者の可能性を信じ、引き出せるか。
つらいときこそ、真の弁護士への本気度が試されていると思います。

ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。

経営者は日々様々な課題に直面し、意思決定を迫られます。
そんな時、気軽に話せる相手はいらっしゃいますか。

私は法律トラブルに限らず、経営で直面するあらゆる悩みを「波戸岡さん、ちょっと聞いてよ」とご相談いただける顧問弁護士であれるよう日々精進しています。

経営者に伴走し、「本音で話せる」存在でありたい。
そんな弁護士を必要と感じていらっしゃいましたら、是非一度お話ししましょう。

ご相談中の様子

波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ

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