弁護士の仕事・その8「転ばない力」

弁護士の仕事

弁護士は依頼者に最大限の利益をもたらすために、先方や裁判所に対して交渉を挑みます。
このとき、①自分の言い分に間違いないと確信をもって臨むこともあれば、
②未確定要素や弱みを抱えながら、勝負をかけてぶつかることもあります。

勝負にのぞむとき、よく、「失敗を恐れるな」「イチかバチかやってみよう」という言葉がありますが、これは弁護士にとって説得力はありません。失敗したときに迷惑するのは自分ではなく依頼者だからです。私自身、思い切ってトライしたいけど、失敗した時のダメージが依頼者にいくことを考えて躊躇することはしばしばです。

では、どういう態度で“勝負にのぞむ”のか。
ひとつは、「もしこれが通らないならこの手で行く」という次善策を用意しておくことです。これはBATNA(Best Alternative to a Negotiated Agreement)ともいいます。
BATNAを用意しておくと、「失敗しても大丈夫。いや、そもそも失敗がない」という態度で勝負に臨めるので、自信と余裕をもって交渉に臨めます。

だけど、BATNAに頼ると、安易に高めの数字を吹っかけて、適当なところで妥協するという「ありがちな交渉」に陥る危険があります。なので、BATNAは必須ではあるけれど、これさえあればいい交渉ができるわけではありません。

もう一歩、その先を行く必要があります。
弁護士は、言い分をぶつけ(主張)、それを証拠で裏付けたら(立証)、最終的には勝訴判決を目指します。もちろん判決内容は言い渡されるまで分かりません。けれど、主張と立証が揺らぎないものであれば、判決前でも勝訴判決は確信できるはずです。
だから、まだ見ぬ判決であっても、判決を想像し、今の交渉が決裂しても判決で勝てると確信できる次元に到達すれば、安易なBATNAに頼らない、あるいは勝訴判決という強力なBATNAをもって妥協なき交渉をすることができます。

だから、弁護士は(私は!)、交渉に臨むにあたっては、主張と立証をとことん固め、精度を上げ、結果がどうなるか分からないレベルでの交渉(冒頭②)から、より一層、間違いなく自分の言い分は通ると確信したレベルでの交渉(冒頭①)の次元に到達できるように努力しなければなりません。そうすることで、失敗しない交渉、依頼者が転んでしまわない交渉を実現することができます。

こんなふうに、依頼者の最大限の利益の実現をめざす交渉では、BATNAを用意しながらも、それに頼ることのない揺らぎなきぶつかりあいをするのだ!というお話でした。
つづく(^^)

ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
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私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。

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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
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