弁護士の仕事・その7「導く力」

弁護士の仕事

弁護士は依頼者の代理人であり代弁者ですので、依頼者の意思や考えに反して活動することはありません。

では、それって、依頼者の言いなりになって、依頼者の伝言係となるということなのでしょうか。
いえ、もし単なる伝言係だとすれば、代理人は誰だっていいはずで、弁護士である必要はありません。

弁護士は、依頼者の話を聴き、共感したら、依頼者にとって最大限の利益を実現するために、知恵を振り絞って調べ、理屈を組み立て、証拠を集めて、依頼者の思いを前に進めていきます。
すると、その過程において、依頼者の「意思」にそのまま従っても、必ずしもご本人の「利益」に結びつかないことが時々あることに気づきます。

例えば、500万円の一括返済を強く望む依頼者の意向に対して、先方が月10万円の分割返済を望んでいる場合、そのまま一括返済だけを求め続けていたら、先方はそっぽ向いてしまうかもしれません。そのまま判決をとっても先方が財産を隠し姿も隠してしまったら、月10万円どころか1円も返ってこないことになってしまいます。

しかし、依頼者の利益のためだからといって、依頼者の意思に反した行動をとれば、「何を勝手なことをやってるんだ」とご本人との信頼関係が崩れてしまいます。

ではどうすればよいのでしょう。

依頼者の「意思」に従うことが、依頼者の「利益」に反することになる場合、弁護士は、そのことをきちんと分かりやすく依頼者に説明する義務があります。
ご本人の意思(A)に沿うべく懸命に努力してきたが、ご本人の意思とは別のところ(B)にご本人の最大の利益が見つかった。
だとすれば、ここはこのままAで突っ走るよりも、Bを採った方が得策ではないだろうか。Aのメリットデメリットと、Bのメリットデメリットをきちんと説明する。
その結果、ご本人が、「なるほどそういうことか、それならBにしよう」という考えになれば、ご本人の意思と利益が反することにはならなくなります。
結果的に、弁護士はご本人の新たな意思Bに従って、最大の利益Bを実現することができるというわけです。

この、意思→利益→意思というプロセスを経ること、しかもそのプロセスが弁護士の押し付けではなく、ご本人が自ら選んで歩む道筋であることが大切です。
そのために、弁護士は(私は!)、自分が気づいたご本人の利益を、分かりやすく正確にご本人に伝え、ご本人が正しい道を歩めるように「導く力」をつけなければなりません。

こんなふうに、弁護士が依頼者の代理人としてその意思と利益を最大限実現するためには、依頼者の道しるべにならなければならないんだ、というお話でした。
つづく(^^)

(Photo by (c)Tomo.Yun,http://www.yunphoto.net)
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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ

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