弁護士の仕事・その6「教わる力」

弁護士の仕事

弁護士は依頼者の言い分を論理的に主張し、それを裏付ける証拠を集めて立証しますが、
その「素材」となる出来事は、生の事実であり、当事者しか知らない現実ですので、弁護士にとっては知らない世界であったりします。
けれども弁護士はそういう素材を扱う以上、その素材をしっかり理解しなければなりません。

例えば建築をめぐるトラブルであれば、そもそもどうやって建物が建つのか、構造、設計、施工、監理、外装、内装…という流れを知らなければなりません。
美容施術のトラブルであれば、どういう器具をもちいてどのように皮膚や組織にアプローチするのか、その仕組みを理解しなければなりません。

こうしたとき、理解への一番の近道は、建築士や医師、美容師などその道の専門家に教わることです。
餅は餅屋であり、聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥とは、まさにその通り。
もちろん、どの方もお忙しく、限られた貴重な時間を頂戴するわけですから、せめて基本的な事柄、イロハのイ位は分かる程度に文献を調べてから教わりに伺います。

そうすると、依頼者が訴えていた生の現実がどういう世界だったのかが分かると同時に、自分にとっても、それまで知らなかった新しい世界の窓が開き、脳が快感を覚え、教えてくださった方への尊敬の気持ちが育ち、自分が磨かれます。
「建物ってそうやって建てられていたんだ!すごい!」とか「なるほど、美容施術ってそんな仕組みで行われてるのか!」という具合です。

こうやって生の現実や当事者しか知らない現実を、自分の実感としてつかむことができると、あとは書面はすらすら書けるし、証拠も自信をもってがっちり提出することができます。

この流れを作るためには、人に気持ちよく教えてもらう力をつける、いわば「教わり上手」になる必要があります。
弁護士は、なぜか昔も今も「先生」と呼ばれており、まるで何でも知っているかのように思われ、また自分でもそのように思い込んでしまう悪い癖があります。
この無意味な「業界用語」とプライドが邪魔をして、人に教わることをためらうとすれば、あまりにもったいない。弁護士個人の問題にとどまるならばともかく、ひいては依頼者に迷惑をかけてしまいます。

ですので、法律しか知らない弁護士は(私は!)、つねに幅広く勉強を続け、人から気持ちよく教えてもらえる力をつけなければならりません。
こんなふうに、弁護士が依頼者から話を「聴いて」「共感して」「検索して」「組み立てて」「証拠を集めたら」、しっかり教わって自分の知識として実感できるまでにならなければならないんだ、というお話でした。
つづく(^^)。

(Photo by (c)Tomo.Yun,http://www.yunphoto.net)
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弁護士 波戸岡光太
その思い、前に進める法律家。
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